バラ科
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ハマナス | 特徴と育て方

Rosa-rugosa
伊東 春乃

ハマナスは、東アジアを原産とするバラ科の落葉低木で、日本では北海道から本州北部の海岸にかけて自生しています。潮風や寒さに強く、野生のバラとしてのたくましさと、香り高い美しい花の両面を備えた品種です。

本記事では、ハマナスの基本情報、世界各地での文化的な背景、歴史的な展開、育て方のポイントを詳しくご紹介します。

基本情報

  • 学名Rosa rugosa
  • 科名: バラ科(Rosaceae)
  • 原産地: 日本、中国東北部、朝鮮半島、ロシア極東(シベリア沿岸部)
  • 外観: 葉は厚みがあり、深いしわ(rugosa=しわのある)を持つことからその名が付けられました。花は直径5〜9cmほどの一重咲きが基本で、色は紅紫色や白が一般的です。芳香が強く、花後には大きな赤い果実(ローズヒップ)を実らせます。
  • 開花時期: 5月中旬から9月頃まで、条件が整えば断続的に開花します。

世界各地での花の文化的特徴

ハマナスは、日本では海浜植物の代表格として古くから知られ、北海道では道の花として選定されています。道東・根室地方や道北の利尻礼文地域では、砂浜や海岸草原に群生しており、地域の景観を形成する重要な存在です。

また、アイヌの人々はハマナスの開花を夏の訪れの目安として意識していたとされ、季節の巡りを感じる植物として日常の中に取り込まれてきました。

19世紀後半になると、ハマナスはヨーロッパにも導入されます。イギリスやドイツでは、その強い芳香と耐寒性、病害虫への強さが注目され、園芸用バラの育種素材として利用されるようになりました。

これにより、ハマナス由来の「ハイブリッド・ルゴサ」と呼ばれる系統が確立され、冷涼な地域に適した品種として庭園や公園に定着しました。

花の歴史的エピソード

ハマナスの歴史は日本の文献においても古く、江戸時代中期の植物図譜『本草図譜』や『草木図説』などに記録が見られます。日本では観賞用よりも自生植物としての認識が強く、風土や景観の一部として捉えられてきました。

海外での展開は、19世紀中頃の植物探検によって始まります。イギリスのプラントハンターたちは極東地域から植物を持ち帰り、その中にハマナスも含まれていました。ロンドンのキュー王立植物園では、ハマナスの育成が試みられ、その強健さと香りから注目を集めました。

さらに、フランス、オランダ、ドイツではハマナスを基にした交配が活発に行われ、19世紀末から20世紀初頭には多数のハイブリッド・ルゴサ系品種が発表されます。

たとえば、ドイツの園芸家ペーター・ランバートによる「ロザリー・デ・ライス」などが有名です。こうした品種は、北米やロシアにも導入され、公園樹や防風・防砂林としても利用されてきました。

ガーデニングアドバイス

ハマナスは耐寒性・耐潮性が高く、過酷な環境下でも比較的安定して育ちます。庭植え、鉢植えいずれにも適しており、以下の点に注意すれば家庭でも管理しやすい植物です。

日照

日当たりの良い場所を好みます。海岸地域に自生するため、強い日差しにもよく耐えます。半日陰でも育ちますが、花つきは控えめになる傾向があります。

水やり

地植えの場合は、定着後は基本的に自然降雨のみで育ちます。鉢植えでは、表土が乾いたらたっぷりと水を与えましょう。水の与えすぎには注意してください。

土壌

水はけがよく、適度に保水性のある土壌が適しています。腐葉土を混ぜた砂質の土や、排水性の高い培養土が推奨されます。

肥料

春と秋に緩効性肥料を施すと、株の生育と花つきが安定します。施肥の回数や量は製品の指示に従ってください。

剪定

花後や冬期に、枯れ枝や混み合った枝を整理することで、株全体の風通しが良くなり、病害の予防にもつながります。更新剪定は3〜5年に一度行うと効果的です。

越冬管理

耐寒性が非常に高く、積雪地でも戸外で越冬可能です。鉢植えの場合は、強風や凍結を避けるために、軒下や風の当たらない場所で管理しましょう。

まとめ

ハマナスは、自然環境に適応したバラの一種でありながら、園芸的にも高い評価を受けてきた植物です。

日本では北海道を中心に海岸植物として親しまれ、文化や風景の一部として根付いています。19世紀にはヨーロッパに導入され、寒冷地に適した園芸品種の基礎として用いられました。

地域や時代を超えて愛されてきたこの植物は、庭園でも自然風の植栽でもその存在感を発揮し、多様な景観づくりに活かすことができます。

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