フウロソウ科
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ゼラニウム・ファエウム | 特徴と育て方

Geranium-phaeum
伊東 春乃

ゼラニウム・ファエウムは、深みのある紫色の花と繊細な葉姿が魅力の多年草で、ヨーロッパを中心に長い歴史を持つ園芸植物です。

自然な風合いと控えめな美しさが評価され、伝統的な庭園から現代のナチュラルガーデンまで幅広く利用されています。

この記事では、その文化的背景や歴史的なエピソード、栽培のポイントに至るまで、より詳しくご紹介いたします。

基本情報

  • 学名Geranium phaeum
  • 科名: フウロソウ科(Geraniaceae)
  • 原産地: 中央〜南東ヨーロッパ(アルプス、カルパティア山脈、バルカン半島)
  • 外観: 花は黒紫色から深紫色で、花弁がやや反り返る独特の形状を持ちます。花径は約2〜3cmと小ぶりで、茎先にいくつも咲かせる姿が印象的です。葉は掌状に深く裂け、淡い模様を帯びる品種もあります。株全体には繊毛が生えています。
  • 開花時期: 5月〜6月を中心とした春〜初夏

世界各地での花の文化的特徴

ゼラニウム・ファエウムは、野生的な風合いと日陰でも咲く強さを併せ持つことから、イギリスやドイツ、オーストリアなどで「ウッドランドガーデン(林床風庭園)」の定番植物とされています。

イギリスでは、ヴィクトリア時代以降の庭園文化の中で、「formal(整形式)」なガーデンから「naturalistic(自然主義)」なスタイルへ移行する過程で、雑木林のような景観を演出する草花として重用されてきました。

また、都市部における庭づくりでも、ゼラニウム・ファエウムは日陰を美しくする植物として評価されており、樹木の下や建物の北側など、限られた採光環境でも活用されています。

オランダやベルギーでは、市民農園や小さな裏庭の中で自然に咲く宿根草として位置付けられ、地域の緑化活動の一環としても植栽されています。

花の歴史的エピソード

ゼラニウム・ファエウムに関する最古の記録のひとつは、16世紀のドイツの植物誌『Neue Kreüterbuch』(作者:Leonhart Fuchs)に見ることができます。

当時すでに「山野に自生する黒い花を持つフウロソウ」として言及されており、修道院の庭や薬草園にもしばしば栽培されていました。

17世紀には、英国をはじめとした貴族の間で「mourning widow(喪服の未亡人)」という名が流布し、この名は暗色の花が女性の黒衣に見立てられたことに由来します。

この表現は、当時の英国に根強く残っていた服喪文化の影響を反映しています。

18〜19世紀には園芸植物としての品種改良も行われ、現在の代表的な栽培品種「Samobor(サモボル)」は、クロアチアの同名の地域で見つかった葉の模様が美しい変種に由来しています。

こうした品種は、ヨーロッパ各地の植物園で展示されるほか、王立園芸協会(RHS)でも評価を受けています。

ガーデニングアドバイス

ゼラニウム・ファエウムは、半日陰の環境においても花を咲かせ、涼やかな風情をもたらす多年草です。下記のポイントを参考に、適した環境を整えましょう。

日照

明るい日陰や半日陰に適しています。強い直射日光は避け、木漏れ日程度の柔らかい光が理想的です。

水やり

表土が乾いたタイミングで、たっぷりと水を与えます。過湿を避け、風通しを確保することで根腐れを防ぎます。

土壌

水はけと保水性のバランスが取れた中性〜弱アルカリ性の土壌が適しています。腐葉土や軽石を混ぜて、通気性を高めましょう。

肥料

植え付け時に緩効性の肥料を施すと安定した生育が期待できます。追肥は春〜初夏に液肥を月1回程度与えると花つきが良くなります。

剪定

花が終わった後の花茎は早めに切り取ることで、株の体力を保ちます。不要な葉や混み合った茎は間引き、風通しを良くしましょう。

越冬

寒冷地でも露地越冬が可能です。地上部は冬に枯れ込みますが、春には再び芽を出します。落葉後の株元をマルチングすると凍結を防げます。

まとめ

ゼラニウム・ファエウムは、控えめながらも風格ある佇まいを持ち、ヨーロッパの庭園文化の中で長く育まれてきた多年草です。

中世から修道院や貴族の庭に用いられ、暗紫色の花に象徴的な意味が重ねられてきました。

現代でも、半日陰の環境で自然な美しさを添える植物として重宝されており、林床のような景観づくりや歴史ある庭園の再現などに広く利用されています。

環境への適応力もあり、季節の移ろいの中で静かに咲くその姿は、植物と人の関係の深さを感じさせる存在です。

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