エピソード

マリーゴールドと死者の日|メキシコで故人を導くとされる黄金色の花

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宮嶋あおば
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鮮やかな黄色やオレンジ色の花を咲かせるマリーゴールドは、世界各地で親しまれている園芸植物です。その明るい花色から、花壇や庭園を彩る植物として広く栽培されています。

一方、メキシコでは、マリーゴールドは特別な文化的意味を持つ花として知られています。

毎年11月初めに行われる伝統行事「死者の日(Día de Muertos)」では、黄金色のマリーゴールドが祭壇や墓地を彩り、亡くなった家族や大切な人々を迎えるために使われます。

メキシコでは、この花は「センパスチル(Cempasúchil)」と呼ばれ、その鮮やかな色と独特の香りが、故人の魂を家族のもとへ導くと信じられてきました。死者の日が近づくと、家々の祭壇にはマリーゴールドが飾られ、故人を迎えるために花びらの道が作られます。

なぜメキシコでは、マリーゴールドが死者を迎えるための花として使われるようになったのでしょうか。

この記事では、マリーゴールドとメキシコの死者の日の関係について、花の歴史や文化的な背景を紹介します。

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1. メキシコのマリーゴールド「センパスチル」

メキシコの死者の日に使われる代表的なマリーゴールドは、キク科コウオウソウ属の「Tagetes erecta」という植物です。

日本ではアフリカンマリーゴールドとも呼ばれ、大きく丸い花を咲かせることが特徴です。

黄色やオレンジ色の花弁が幾重にも重なり、華やかな姿をしています。また、花や葉には独特の強い香りがあります。

この植物はメキシコを中心とする地域が原産で、古くから現地の人々によって栽培されてきました。

16世紀にスペイン人がメキシコへ到来した頃には、すでに現地で広く知られており、儀式や伝統的な薬用植物としても利用されていました。

その後、ヨーロッパへ伝わり、世界各地で栽培されるようになります。現在では、花壇や庭園を彩る代表的な園芸植物の一つとなっています。

メキシコでは一般に「センパスチル(Cempasúchil)」と呼ばれています。

この名称は、メキシコの先住民が使用してきたナワトル語の「Cempohualxochitl」に由来しており、「Cempohuali」は20、「Xochitl」は花を意味します。

また、メキシコでは「死者の花(Flor de Muerto)」という名前でも知られています。

その名前が示すように、センパスチルは亡くなった人々を迎えるための花として、メキシコの伝統文化に深く根づいています。

2. 古代メキシコで太陽と結びついた花

センパスチルが特別な意味を持つようになった背景には、古代メキシコの人々の自然観や宗教観があります。

スペイン人がメキシコへ到来する以前、現在のメキシコ中央部では、メシカ人をはじめとするさまざまな人々が独自の文化を築いていました。

彼らは太陽や雨、大地などの自然現象を重要な存在として捉え、植物にも宗教的な意味を見いだしていました。

センパスチルも、こうした文化のなかで特別な意味を持つ花でした。鮮やかな黄色やオレンジ色の花は、太陽の光や暖かさを連想させるものとして捉えられていました。

古代メキシコでは、太陽は生命を支える重要な存在であり、神々への信仰とも深く結びついていました。特にメシカ人は、太陽が世界の秩序を維持するうえで重要な役割を果たすと考え、太陽神を崇拝していました。

こうした文化のなかで、太陽を思わせる黄金色のセンパスチルは、生命や死と結びついた象徴的な花として扱われるようになりました。

また、古代メキシコでは、人間の死を生命の循環の一部として捉える考え方がありました。

亡くなった人々の魂は死後の世界へ向かうと信じられ、死者を弔うための儀式や供え物も重要な意味を持っていました。センパスチルも、こうした宗教的な儀式や供え物に用いられていたとされています。

3. メキシコの伝統行事「死者の日」

メキシコの死者の日は、亡くなった家族や大切な人々を迎え、その思い出を大切にする伝統行事です。

毎年10月末から11月初めにかけて行われ、特に11月1日と2日が重要な日とされています。

一般に、11月1日は亡くなった子どもたちを、11月2日は亡くなった大人たちを迎える日として知られています。この時期には、故人の魂が家族のもとへ帰ってくると信じられており、人々はさまざまな準備をしてその帰りを迎えます。

死者の日の起源には、古代メキシコの先住民文化とキリスト教の伝統が深く関係しています。

スペイン人が到来する以前のメキシコでは、先住民の人々が独自の死生観を持ち、亡くなった人々を敬うための儀式を行っていました。

16世紀にスペインによる植民地支配が始まると、キリスト教の信仰や行事が広まり、11月1日の諸聖人の日と11月2日の死者の日が、先住民の伝統的な習慣と結びついていきました。

こうして長い年月をかけて、現在のメキシコに見られる死者の日の文化が形作られていったのです。

死者の日が近づくと、家庭では故人を迎えるための祭壇を設け、写真や好物だった料理、飲み物、花、ろうそくなどを飾ります。

さらに、家族で墓地を訪れ、墓を清掃して花を供えたり、故人の思い出を語り合ったりする習慣もあります。

地域によっては、音楽や行列などを伴う行事が行われ、街全体が色鮮やかな装飾に包まれます。

このように死者の日は、亡くなった人々をしのびながら、家族とのつながりを再確認し、故人との再会を祝う意味を持つ行事となっています。

4. 黄金色の花が故人の魂を導く

センパスチルが死者の日に使われる大きな理由の一つが、故人の魂を導く花と考えられていることです。

メキシコの伝統では、センパスチルの鮮やかな色と独特の香りが、故人の魂に帰る道を示すとされています。

そのため、死者の日にはセンパスチルの花びらを地面に敷き詰め、家の入口から祭壇まで道を作る習慣があります。地域や家庭によっては、墓地から家へ向かう道に花びらをまいたり、祭壇へ続く通路に花を並べたりすることもあります。

さらに、花びらの道に沿ってろうそくを灯すこともあります。ろうそくの光とセンパスチルの鮮やかな色彩が組み合わさることで、故人を迎えるための道が作られます。

この習慣には、亡くなった人々が迷わず家族のもとへ帰り、再び大切な人々と過ごせるようにという願いが込められています。

5. 祭壇を彩るマリーゴールド

死者の日に欠かせないものの一つが、故人を迎えるために設けられる祭壇です。

一般に「オフレンダ(Ofrenda)」と呼ばれ、家庭や公共の場所などに設けられます。

オフレンダには、亡くなった家族や大切な人々の写真を飾り、その人が生前に好んでいた食べ物や飲み物などを供えます。

また、ろうそくや水、果物、死者の日に食べられる伝統的なパン「パン・デ・ムエルト(Pan de muerto)」なども用意されます。

ろうそくの光には故人の魂を導く意味があり、水は長い旅を経て帰ってきた魂の渇きを癒やすために供えられます。こうした供え物には、それぞれ故人を迎え、もてなすための意味が込められています。

そして、祭壇を華やかに彩るのがセンパスチルです。黄金色の花を束にして飾ったり、花びらを祭壇の周囲に散らしたりすることで、祭壇全体が明るい色彩に包まれます。

また、センパスチルの花を使って祭壇の周囲にアーチを作ることもあります。このアーチは、死者の世界と生者の世界を結ぶ入口を象徴するものとして知られています。

さらに、祭壇には「パペル・ピカド(Papel picado)」と呼ばれる色鮮やかな切り紙の装飾が飾られることもあります。

パペル・ピカドは、薄い紙にさまざまな模様を切り抜いたメキシコの伝統的な装飾です。死者の日には、花や骸骨などを描いたものが祭壇を彩ります。

こうした装飾や供え物とともに、センパスチルの鮮やかな色彩は、死者の日の祭壇を特徴づける重要な要素となっています。

6. 現在まで受け継がれるマリーゴールドの文化

センパスチルは、現在でもメキシコの死者の日を象徴する花として広く親しまれています。

毎年10月になると、メキシコ各地で死者の日に向けた花の栽培や販売が盛んになります。

特にメキシコシティ南部のソチミルコは、センパスチルの栽培が盛んな地域として知られています。この地域では、古くから水路や湿地を利用した「チナンパ」と呼ばれる農法が行われており、現在でも伝統的な農業景観が残されています。

ソチミルコでは、このような農業の伝統を受け継ぎながら、センパスチルをはじめとするさまざまな花が栽培されています。

また、死者の日の行事では、センパスチルを使った大規模な花の装飾も行われます。

花びらを敷き詰めて模様を作ったり、広場や街路を黄金色の花で彩ったりするなど、伝統的な花の文化はさまざまな形で受け継がれています。

地域によっては、センパスチルを使った花のアーチや祭壇が作られ、街全体が死者の日を迎えるための装飾に包まれます。

こうした行事には地域の住民も参加し、家族や地域社会が協力して伝統を守り続けています。

2003年には、メキシコの先住民による死者の日の伝統行事が、ユネスコによって「人類の口承及び無形遺産の傑作」として宣言されました。

その後、2008年にはユネスコの無形文化遺産の代表一覧表に記載されました。

こうした文化的な評価を通じて、死者の日はメキシコを代表する伝統行事として国際的にも広く知られるようになりました。

そして、その象徴的な存在であるセンパスチルも、メキシコの文化を代表する花の一つとなっています。

7. まとめ

マリーゴールドは、メキシコの死者の日に欠かせない花として古くから親しまれてきました。

メキシコでは「センパスチル」と呼ばれ、鮮やかな黄色やオレンジ色の花は太陽の光や生命と結びつけられてきました。

また、センパスチルの色と香りには、亡くなった人々の魂を家族のもとへ導く力があると信じられています。

そのため、毎年11月初めに行われる死者の日には、家庭の祭壇や墓地にセンパスチルが飾られ、故人を迎えるための花びらの道が作られます。

こうした習慣には、亡くなった家族や大切な人々を迎え、その思い出を大切にするメキシコの文化が表れています。

黄金色の花びらで道を作り、故人の帰りを迎えるという習慣は、マリーゴールドが人々の記憶や家族のつながりを象徴する存在となっていることを物語っています。

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Fioria では、花の文化や歴史、ガーデニングの楽しみ方など、花にまつわるさまざまな情報をお届けします。
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